ホーム インフォメーション 日本の水道水は本当に安全?基本を理解しよう

日本の水道水は本当に安全?基本を理解しよう

日本の水道水は、世界的に見ても極めて高い安全基準で管理されており、そのまま飲むことができる数少ない国のひとつです。

しかし、「本当に安全なのか」と不安に感じるかたも少なくありません。

ここでは、日本の水道水がなぜ安全といえるのか、その根拠を詳しく解説します。

CONTENTS

水道水をそのまま飲める国は世界で12カ国だけ

世界には約200の国と地域がありますが、そのなかで水道水をそのまま飲める国はわずか12カ国程度とされています。

日本をはじめ、フィンランド、スウェーデン、ドイツ、オーストリア、アイルランド、アイスランド、スロベニア、アラブ首長国連邦、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどが該当します。

これらの国々では、厳格な水質基準と徹底した管理体制によって、安全な水道水が供給されているのです。

日本の水道水は、このなかでも特に高い品質を誇ることで知られています。

【世界地図で水道水が飲める国を色分けした図】

水道水をそのまま飲める世界12カ国を示した世界地図

日本の水道水が安全な3つの理由

日本の水道水が世界トップレベルの安全性を持つ理由は、大きく分けて3つあります。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

水道法による厳格な水質基準

日本の水道水は、水道法という法律によって、非常に厳しい水質基準が定められています。

この水質基準は、51項目にもおよび、一般細菌や大腸菌をはじめ、ヒ素や水銀などの有害物質が基準値以下であることが求められます。

興味深いことに、ペットボトルで販売されているミネラルウォーターの水質基準は18項目にとどまります。

つまり、水道水のほうがミネラルウォーターよりも厳しい基準をクリアしているのです。

さらに、水道法では「水質管理目標設定項目」として27項目が、「要検討項目」として46項目が設定されており、より高い安全性を目指した管理が行われています。

これらの基準値は、WHO(世界保健機関)のガイドラインを参考にしつつ、健康影響等に関する研究・調査、諸外国の基準値等の設定状況、検査技術等を総合的に検討したうえで、厚生労働省が決定しています。

出典: 厚生労働省「水道水質基準について」 URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/index.html

徹底した浄水処理システム

日本の水道水が安全に供給されるまでには、いくつもの浄水処理工程があります。

まず、河川や湖沼から取り入れた原水は、沈殿・ろ過・消毒という3つの基本的な処理を受けます。

沈殿処理では、凝集剤を加えることで水中の不純物を固まりにして沈殿させます。

その後、砂ろ過によって微細な不純物を取り除き、最後に塩素消毒を行うことで病原性微生物を殺菌します。

塩素は強力な殺菌剤であり、細菌やウイルスの細胞膜を破壊することで、安全な水を家庭に届ける役割を担っています。

また、近年では高度浄水処理を導入する浄水場も増えています。

高度浄水処理では、活性炭やオゾンを使用することで、通常の浄水処理では除去しきれない有機物やカビ臭の原因物質などを効果的に取り除くことができます。

この技術により、水道水の味やにおいも大きく改善されました。

出典: 東京都水道局「浄水処理について」 URL: https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/

【 浄水処理の流れを示す図解】

水道水の浄水処理工程を示した図解

24時間365日の水質監視体制

日本の水道事業者は、24時間365日体制で水質を監視しています。

浄水場では、取水、浄水、送水のそれぞれの段階で水質検査を実施し、常に基準値を満たしているかを確認しています。

多くの水道局では、センサーやカメラなどを用いて、水質や水圧などをリアルタイムで監視するシステムを構築しています。

このシステムにより、異常があればすぐに検知することができ、迅速な対応が可能になっています。

また、水質検査の結果が基準値を超えた場合は、直ちに原因を調査し、適切な措置が取られます。

このような徹底した管理体制が、日本の水道水の安全性を支えているのです。

出典: 東京都水道局「水質検査について」 URL: https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/kijun/

水質基準51項目とは何か

水道法で定められている水質基準51項目は、大きく分けて以下のカテゴリーに分類されます。

一般細菌・大腸菌: 水の微生物学的安全性を示す基本的な指標です。

重金属類: ヒ素、鉛、水銀、カドミウムなど、人体に有害な金属類の濃度を規制しています。

無機物質: フッ素、ホウ素、シアンなど、健康に影響を及ぼす可能性がある無機物質が対象です。

有機物質: トリハロメタン、農薬類、揮発性有機化合物など、化学物質による汚染を防ぐための基準です。

消毒副生成物: 塩素消毒の過程で生成される物質に関する基準です。

これらの項目は、生涯にわたり摂取しても健康に影響が生じない水準をもって、基準値が設定されています。

つまり、毎日水道水を飲み続けても、健康被害が出ないように設計されているのです。

また、水質基準は科学的知見の進歩や社会情勢の変化に応じて、定期的に見直しが行われています。

実際に、2026年4月からは、近年問題となっている**PFAS(有機フッ素化合物)**が、「水質管理目標設定項目」から「水質基準項目」へと格上げされる予定です。

これにより、PFASに関する検査が義務化され、より厳格な管理が求められることになります。

出典: 厚生労働省「水質基準の見直しについて」 URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/

【: 水質基準51項目の分類を示す表】

分類No.項目名基準値
1. 健康に関する項目
(人の健康保護の観点から設定された項目)
全31項目
1一般細菌1mlの検水で形成される集落数が100以下
2大腸菌検出されないこと
3カドミウム及びその化合物カドミウムの量に関して、0.003以下
4水銀及びその化合物水銀の量に関して、0.0005以下
5セレン及びその化合物セレンの量に関して、0.01以下
6鉛及びその化合物鉛の量に関して、0.01以下
7ヒ素及びその化合物ヒ素の量に関して、0.01以下
8六価クロム化合物六価クロムの量に関して、0.02以下
9亜硝酸態窒素0.04以下
10シアン化物イオン及び塩化シアンシアンの量に関して、0.01以下
11硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素10以下
12フッ素及びその化合物フッ素の量に関して、0.8以下
13ホウ素及びその化合物ホウ素の量に関して、1.0以下
14四塩化炭素0.002以下
151,4-ジオキサン0.05以下
16シス-1,2-ジクロロエチレン及び
トランス-1,2-ジクロロエチレン
0.04以下
17ジクロロメタン0.02以下
18テトラクロロエチレン0.01以下
19トリクロロエチレン0.01以下
20ベンゼン0.01以下
21塩素酸0.6以下
22クロロ酢酸0.02以下
23クロロホルム0.06以下
24ジクロロ酢酸0.03以下
25ジブロモクロロメタン0.1以下
26臭素酸0.01以下
27総トリハロメタン0.1以下
28トリクロロ酢酸0.03以下
29ブロモジクロロメタン0.03以下
30ブロモホルム0.09以下
31ホルムアルデヒド0.08以下
2. 水道水が有すべき性状に関する項目
(生活利用上障害が生ずるおそれのない観点から設定された項目)
全20項目
32亜鉛及びその化合物亜鉛の量に関して、1.0以下
33アルミニウム及びその化合物アルミニウムの量に関して、0.2以下
34鉄及びその化合物鉄の量に関して、0.3以下
35銅及びその化合物銅の量に関して、1.0以下
36ナトリウム及びその化合物ナトリウムの量に関して、200以下
37マンガン及びその化合物マンガンの量に関して、0.05以下
38塩化物イオン200以下
39カルシウム、マグネシウム等(硬度)300以下
40蒸発残留物500以下
41陰イオン界面活性剤0.2以下
42ジェオスミン0.00001以下
432-メチルイソボルネオール0.00001以下
44非イオン界面活性剤0.02以下
45フェノール類フェノールの量に換算して、0.005以下
46有機物(全有機炭素(TOC)の量)3以下
47pH値5.8以上8.6以下
48異常でないこと
49臭気異常でないこと
50色度5度以下
51濁度2度以下

水道水に含まれる物質とその安全性

水道水には、安全性を保つために必要な物質や、浄水処理の過程で微量に残る物質が含まれています。

これらの物質について正しく理解することで、水道水に対する不安を軽減することができます。

ここでは、水道水に含まれる主な物質とその安全性について、科学的根拠にもとづいて解説します。

塩素消毒の必要性と人体への影響

水道水の安全性を語るうえで、塩素は避けて通れない存在です。

塩素に対して不安を感じるかたも多いですが、実は水道水を安全に保つために欠かせない物質なのです。

なぜ塩素を入れるのか

日本では、水道法第4条により、水道水への塩素消毒が義務付けられています。

塩素を添加する最大の理由は、病原性微生物の殺菌です。

自然界の水には、大腸菌やサルモネラ菌、赤痢菌、コレラ菌など、人体に有害な細菌やウイルスが含まれている可能性があります。

塩素は、これらの病原性微生物を効果的に殺菌し、水道水を安全に保つ役割を担っています。

また、塩素には残留性という特性があります。

浄水場で塩素を注入すると、その効果は家庭の蛇口に届くまで持続します。

これにより、浄水場から家庭までの長い配水管の中で、再び細菌が繁殖することを防ぐことができるのです。

もし塩素消毒がなければ、配水管の中で細菌が増殖し、蛇口から出る水が汚染されてしまう危険性があります。

出典: 厚生労働省「水道法第4条及び第22条等の関係について」 URL: https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/hourei/suidouhou.html

【 塩素の殺菌メカニズムを示すイラスト】

塩素が病原性微生物を殺菌するメカニズムを示したイラスト

残留塩素の基準値と安全性

水道法では、蛇口から出る水の残留塩素濃度を最低0.1mg/L以上に保つことが定められています。

これにより、十分な消毒効果が維持されます。

一方で、塩素が多すぎると味やにおいに影響を与えるため、多くの自治体では独自に上限値を0.3〜0.6mg/L程度に設定しています。

WHOのガイドラインによると、上記の基準値をクリアした水道水が人体に影響を与えることはないとされています。

実際、水道水に含まれる程度の塩素濃度では、毎日飲み続けても健康被害が生じることはありません。

ただし、塩素に対して過敏なかたや、塩素のにおいが気になるかたは、浄水器の使用や煮沸によって塩素を除去することができます。

出典: 厚生労働省「水道水質基準について」 URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/

カルキ臭の原因

水道水特有の「カルキ臭」を不快に感じるかたは多いでしょう。

このにおいの主な原因は、クロラミンという物質です。

クロラミンは、水道水に含まれる塩素とアンモニア性窒素が化学反応することで生成されます。

千葉県で実施されたアンケート調査では、水道水をおいしくないと感じる人のうち、**35.3%が「塩素臭いから」**と回答しています。

カルキ臭は健康に害を及ぼすものではありませんが、水道水の味や香りに影響を与えるため、飲みにくさを感じる原因となっています。

近年では、高度浄水処理の導入により、カルキ臭の原因となるアンモニア性窒素を効果的に除去する技術が普及しています。

そのため、以前と比べて水道水のにおいは大幅に改善されています。

出典: 千葉県「その1『水道水』で気になる『塩素のにおい』って?」 URL: https://www.pref.chiba.lg.jp/suidou/keikaku/oishii2/qa/qa01.html

トリハロメタンの危険性と対策

トリハロメタンは、水道水の安全性を考えるうえで注目されている物質のひとつです。

発がん性が指摘されることもあり、不安を感じるかたも多いでしょう。

トリハロメタンとは何か

トリハロメタンとは、浄水場での塩素消毒の過程で生成される消毒副生成物です。

水源となる河川やダムの水には、都市排水や山間部の落ち葉などに由来する有機物質が含まれています。

浄水処理で塩素を加えると、これらの有機物質と塩素が反応して、トリハロメタンが生成されるのです。

トリハロメタンには、クロロホルム、ジブロモクロロメタン、ブロモジクロロメタン、ブロモホルムの4種類があり、これらの合計値を「総トリハロメタン」と呼びます。

このうち、クロロホルムとブロモジクロロメタンは、国際がん研究機関(IARC)によって、「人に対して発がん性を示す可能性がある物質」に分類されています。

出典: 厚生労働省「総トリハロメタン」 URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/

【トリハロメタンの生成メカニズムを示す図解】

トリハロメタンが生成される化学反応を示した図解

発がん性の有無と基準値

トリハロメタンには発がん性の可能性が指摘されていますが、過度に心配する必要はありません。

日本の水道法では、総トリハロメタンの基準値を0.1mg/L以下と定めており、この基準は非常に厳しいものです。

東京都水道局は、「水道局でお配りしている水道水に含まれる全てのトリハロメタンの量は、水質基準値以下であり、安全性に問題はありません」と回答しています。

また、「水質基準は、生涯にわたり摂取しても健康に影響が生じない水準をもって、基準値が設定されています」とも説明しています。

つまり、基準値以下のトリハロメタンを含む水道水を毎日飲み続けても、がんのリスクが高まることはないということです。

実際の水道水に含まれるトリハロメタンの濃度は、多くの地域で基準値を大きく下回っています。

出典: 東京都水道局「水質<水道水の安全性・その他>」 URL: https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/faq/qa-22.html

家庭でできる除去方法

それでもトリハロメタンが気になるというかたには、家庭で簡単にできる除去方法があります。

方法1: 煮沸 水道水を10分以上沸騰させることで、トリハロメタンの大部分を除去できます。

ただし注意が必要なのは、短時間の沸騰はトリハロメタンを増加させるという点です。

トリハロメタンは水温が上昇すると反応が活発になるため、沸騰開始直後から5分程度は、逆に濃度が高くなる傾向があります。

そのため、必ず10分以上煮沸し、やかんのフタを開けて水蒸気とともにトリハロメタンを蒸発させることが重要です。

方法2: 浄水器の使用 活性炭フィルターを搭載した浄水器を使用することで、トリハロメタンを効果的に除去できます。

浄水器については後の章で詳しく解説しますが、定期的なフィルター交換を忘れないようにしましょう。

なお、煮沸や浄水器によって塩素を除去した水は、雑菌が繁殖しやすくなります。

そのため、必ず早めに飲み切るようにしてください。

出典: 東京都水道局「トリハロメタンの除去方法」 URL: https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/faq/qa-22.html

PFAS(有機フッ素化合物)の最新情報

近年、水道水の安全性に関して最も注目されているのが、**PFAS(ピーファス)**です。

PFASは「永遠の化学物質」とも呼ばれ、その健康への影響が世界的に懸念されています。

PFASとは何か

PFAS(Per- and Polyfluoroalkyl Substances)とは、人工的につくられた有機フッ素化合物の総称です。

PFASには数千種類の化合物が含まれますが、特に問題とされているのが、**PFOS(ピーフォス)PFOA(ピーフォア)**という2つの物質です。

PFASは、水や油をはじき、熱に強いという特性があります。

この性質を利用して、フライパンの焦げ付き防止コーティング、撥水加工された衣類や紙製品、泡消火薬剤など、私たちの身の回りにある様々な製品に使用されてきました。

しかし、PFASは自然環境中で分解されにくく、一度環境に放出されると長期間残存します。

また、体内に蓄積しやすいという性質もあり、健康への影響が懸念されています。

現在の研究では、PFASへの長期曝露により、コレステロール値の上昇、発がん性、免疫系への影響、生殖機能への影響などが報告されています。

こうした背景から、日本では主要なPFAS物質の使用・製造や輸入が原則禁止されています。

出典: 環境省「PFAS対策について」 URL: https://www.env.go.jp/water/pfas.html

【PFASが使用されている製品と環境への流出経路を示す図】

PFASが使用されている製品と環境への流出経路を示した図

2026年4月から水質基準項目に

PFASに関する最も重要な最新情報は、2026年4月1日より、PFOSとPFOAが「水質基準項目」へ移行されることです。

これまで、PFOSとPFOAは「水質管理目標設定項目」に位置づけられており、合算値で**50ng/L(ナノグラム/リットル)**を暫定目標値としていました。

しかし、この暫定目標値には法的拘束力がなく、検査も義務ではありませんでした。

2026年4月からは、この暫定目標値が法的拘束力を持つ水質基準へと変更されます。

これにより、全国の水道事業者には、3ヶ月に一度、PFOSおよびPFOAに関する定期的な水質検査の実施が義務付けられます

また、水質検査でPFASが基準値を超えて検出された場合、水道事業者は改善措置を講じることが求められるようになります。

この法改正は、水道水の安全性をさらに高めるための重要な一歩といえるでしょう。

出典: 厚生労働省「水質基準の見直しについて」 URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/

地域別の検出状況

PFASの検出状況は、地域によって大きな差があります。

特に、工業地帯や訓練施設の周辺地域では、高濃度のPFASが検出される傾向があります。

これは、過去にPFASを含む泡消火薬剤が使用されていたことや、工場からの排水が影響しているためです。

NHKが公開している「水道水のPFAS検出状況マップ」では、全国の水道水におけるPFAS検出状況を地域ごとに確認することができます。

このマップでは、最新情報だけでなく、過去の最大値も表示されており、自分の住んでいる地域の状況を把握するのに役立ちます。

もしお住まいの地域でPFASが検出されている場合は、自治体の水道局に問い合わせることで、現在の対策状況や今後の計画について知ることができます。

多くの自治体では、PFASを除去するための高度浄水処理設備の導入を進めています。

出典: NHK「水道水のPFAS検出状況マップ」 URL: https://www3.nhk.or.jp/news/tokushu/pfasmap_water/

【日本地図でPFAS検出地域を色分けした図】

日本全国のPFAS検出状況を示した地図

その他の注意すべき物質

塩素、トリハロメタン、PFAS以外にも、水道水には注意すべき物質がいくつか存在します。

ここでは、特に重要な2つの物質について解説します。

クリプトスポリジウム

クリプトスポリジウムとは、人にも家畜にも感染する病原体の一種です。

この病原体に汚染された食物や飲料水を摂取すると、口から入って腸に寄生し、下痢、腹痛、発熱を引き起こします。

クリプトスポリジウムの厄介な点は、塩素抵抗性が高いことです。

浄水場で塩素を注入しても、クリプトスポリジウムを消毒することはできません。

しかし、心配する必要はありません。

クリプトスポリジウムは、適正量の凝集剤を注入し、沈殿、ろ過することで除去できるのです。

東京都水道局では、厚生労働省が示した「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」にもとづき、浄水場で濁りを徹底的に取り除いています。

また、定期的な検査を実施し、水道水がクリプトスポリジウムに汚染されていないことを確認しています。

そのため、日本の水道水からクリプトスポリジウムに感染する心配はほとんどありません。

出典: 東京都水道局「クリプトスポリジウム対策」 URL: https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/topic/32.html

鉛の溶出リスク

**鉛(なまり)**は、水道水に溶け出す可能性がある有害物質のひとつです。

鉛は、腎臓、肺、肝臓に障害を生じさせることで知られており、特に乳幼児や妊婦への影響が大きいとされています。

水道水に鉛が混入する主な原因は、鉛製給水管の使用です。

鉛製給水管は、サビにくく加工がしやすいという利点から、以前は全国で広く使用されていました。

しかし、老朽化した鉛製給水管からは、鉛が水道水に溶け出す可能性があります。

このため、東京都では平成7年(1995年)から鉛製給水管の使用が禁止されました。

現在、多くの自治体では鉛製給水管から他の材質への取り替え工事を進めています。

もしご自宅が築年数の古い建物であれば、鉛製給水管が使用されている可能性があります。

心配な場合は、水道局に問い合わせて確認することをおすすめします。

また、朝一番の水は配管内に長時間滞留していた水なので、最初のバケツ1杯程度を飲用以外に使うことで、鉛の摂取を減らすことができます。

出典: 東京都水道局「鉛管について」 URL: https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/faq/qa-26.html

地域や住宅による水道水の安全性の違い

日本の水道水は、厳格な基準のもとで管理されていますが、実際の水質はお住まいの地域や住宅の種類によって異なることがあります。 同じ日本国内でも、水源の種類や浄水処理方法、住宅の給水設備によって、蛇口から出る水の状態は変わってくるのです。 ここでは、地域や住宅による水道水の安全性の違いについて、詳しく解説します。

地域による水質の差

日本の水道水は、地域によって水質に差があります。 この差が生まれる主な理由は、水源の種類浄水処理方法の違いです。

水道水の水源には、大きく分けて河川水、湖沼水、地下水、ダム水の4種類があります。 河川水を水源とする地域では、季節によって水質が変動しやすい傾向があります。 梅雨の時期や台風の後には、濁りや有機物が増加するため、塩素の添加量が増えることがあるのです。 その結果、カルキ臭が強くなったり、トリハロメタンの生成量が増えたりする可能性があります。

一方、地下水を水源とする地域では、ミネラル分が豊富で安定した水質が特徴です。 地下水は地層によって自然にろ過されるため、河川水と比べて有機物や細菌が少なく、塩素の添加量も少なくて済むことが多いのです。 ただし、地域によっては地下水中のヒ素やフッ素、硝酸性窒素などの濃度が高い場合があります。

また、浄水処理方法も地域によって異なります。 東京都や大阪市などの大都市では、高度浄水処理が導入されており、活性炭やオゾンを使用した高度な処理が行われています。 高度浄水処理を導入している地域では、カビ臭やトリハロメタンの原因となる有機物が効果的に除去されるため、水道水の味やにおいが大きく改善されています。

しかし、全国の浄水場のうち、高度浄水処理を導入しているのは約2割程度にとどまります。 地方の小規模な浄水場では、従来の浄水処理(沈殿・ろ過・消毒)のみで対応しているケースも多いのです。

近年話題の**PFAS(有機フッ素化合物)**についても、地域差が大きいことが分かっています。 16都府県141拠点の河川や地下水で基準値を超える濃度のPFASが検出されており、特に工業地帯や防災訓練施設の周辺地域では高濃度のPFASが検出される傾向があります。 お住まいの地域のPFAS検出状況は、NHKが公開している「水道水のPFAS検出状況マップ」で確認することができます。

出典: NHK「水道水のPFAS検出状況マップ」 URL: https://www3.nhk.or.jp/news/tokushu/pfasmap_water/

【 日本地図で水源の種類や高度浄水処理の導入状況を示した図】

日本の水源の種類(河川水、地下水、ダム水)と高度浄水処理導入地域を示した日本地図のインフォグラフィック

マンションと一戸建ての違い

水道水の安全性は、住宅の種類によっても異なります。 特に、マンションと一戸建てでは、給水方式の違いから水質に差が生じることがあります。

貯水タンクの衛生管理

マンションやビルなどの集合住宅では、**貯水タンク(受水槽)**を経由して各戸に給水される場合があります。 貯水タンクを使用する給水方式は「貯水槽水道」と呼ばれ、特に高層マンションや大規模な建物で採用されています。

貯水タンクを使用する場合、タンク内の衛生管理が水質に大きな影響を与えます。 タンク内に汚れや藻が発生したり、外部から異物が混入したりすると、水道水の安全性が低下する可能性があるのです。

水道法では、有効容量が10m³を超える貯水槽については、年1回以上の清掃と検査が義務付けられています。 しかし、10m³以下の小規模な貯水槽については、法的な義務がなく、管理が不十分になりやすい傾向があります。

マンションにお住まいのかたは、管理組合や管理会社に貯水タンクの清掃・検査記録を確認することをおすすめします。 もし清掃や検査が定期的に行われていない場合は、水質に問題が生じている可能性があります。

出典: 厚生労働省「貯水槽水道について」 URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/01.html

給水管の材質と築年数

住宅の築年数給水管の材質も、水道水の安全性に影響を与える重要な要素です。

特に注意が必要なのが、鉛製給水管です。 鉛製給水管は、サビにくく加工がしやすいという利点から、かつては全国で広く使用されていました。 しかし、老朽化した鉛製給水管からは、鉛が水道水に溶け出す可能性があります。 鉛は体内に蓄積しやすく、特に乳幼児や妊婦への健康影響が大きいとされています。

東京都では平成7年(1995年)から鉛製給水管の使用が禁止されましたが、それ以前に建てられた住宅では、いまだに鉛製給水管が残っている可能性があります。 全国的に見ると、鉛製給水管から他の材質への取り替え工事は進んでいますが、完全に解消されたわけではありません。

築30年以上の住宅にお住まいの場合は、給水管の材質について水道局に問い合わせて確認することをおすすめします。

また、給水管が亜鉛メッキ鋼管の場合も注意が必要です。 亜鉛メッキ鋼管は内部がサビやすく、長期間使用すると赤水(赤茶色に濁った水)が出ることがあります。 赤水自体は人体に害を及ぼすものではありませんが、見た目や味に影響を与えるため、不快に感じるかたも多いでしょう。

出典: 東京都水道局「鉛管について」 URL: https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/faq/qa-26.html

【給水管の種類と特徴を示した比較図】

鉛管、亜鉛メッキ鋼管、ステンレス管、塩ビ管の断面図とメリット・デメリットを比較した給水管の変遷図

朝一番の水は使わないほうがいい理由

朝一番に蛇口から出る水は、飲用を避けたほうがいいと言われることがあります。 これには、科学的な根拠があるのです。

夜間は水道を使用しないため、給水管内の水は長時間滞留した状態になっています。 この間に、給水管から微量の金属成分が水に溶け出す可能性があるのです。 特に、鉛製給水管や亜鉛メッキ鋼管を使用している住宅では、この傾向が顕著になります。

また、塩素は時間の経過とともに揮発して減少するため、滞留した水では殺菌効果が低下している可能性もあります。

そのため、朝一番の水は、最初のバケツ1杯程度(約10リットル)を飲用以外の用途(植木の水やり、掃除など)に使うことをおすすめします。 これにより、滞留していた水を排出し、新鮮な水を飲むことができます。

旅行などで数日間家を空けた後も、同様の対応をすることで、より安心して水道水を飲むことができるでしょう。

水が濁る・臭いがする場合の対処法

蛇口から出る水に異常を感じた場合は、適切な対処が必要です。 ここでは、よくある症状と対処法をご紹介します。

白く濁る場合 水道水が白く濁って見える場合、多くは空気の混入が原因です。 水道管内の圧力変化により、水に溶け込んだ空気が細かい気泡となって白く見えるのです。 コップに水を入れてしばらく放置すると、下から透明になっていきます。 これは空気が抜けているだけなので、安全上の問題はありません。

赤茶色に濁る場合 赤茶色の濁りは、水道管内のサビが原因であることが多いです。 特に、近隣で水道工事が行われた後や、消火栓が使用された後に発生しやすくなります。 しばらく水を出し続けて、透明になってから使用してください。 濁りが長時間続く場合は、水道局に連絡しましょう。

カルキ臭がする場合 カルキ臭は、水道水に含まれる塩素が原因です。 健康への害はありませんが、気になる場合は、汲み置きして塩素を飛ばすか、浄水器を使用するとよいでしょう。 煮沸でも塩素を除去できますが、電気代やガス代がかかります。

カビ臭・土臭がする場合 夏場に水道水からカビ臭や土臭がすることがあります。 これは、水源となるダムや河川で藻類が繁殖し、ジェオスミンや**2-MIB(2-メチルイソボルネオール)**という物質が発生するためです。 これらの物質は微量でも臭いを感じやすいですが、健康への害はありません。 高度浄水処理を導入している地域では、これらの物質が除去されるため、臭いが軽減されています。

原因不明の異常がある場合 上記に当てはまらない異常を感じた場合は、すぐに水道局に連絡してください。 水道局では水質検査を行い、原因を調査してくれます。

出典: 東京都水道局「水道水の濁り・臭いについて」 URL: https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/faq/qa-21.html

【 水道水のトラブル症状と原因・対処法をまとめた図】

水道水の白濁、赤濁、カルキ臭、カビ臭の原因とそれぞれの対処法をまとめたフローチャート形式の図

水道水をより安全に飲むための対策方法

日本の水道水は、そのまま飲んでも安全ですが、より安心して飲みたいかたや、塩素やトリハロメタン、PFASなどが気になるかたには、いくつかの対策方法があります。 ここでは、家庭でできる水道水の安全対策について、詳しく解説します。

煮沸消毒の正しい方法

煮沸は、最も手軽にできる水道水の安全対策です。 塩素やトリハロメタンを除去するだけでなく、万が一残存している病原性微生物を殺菌する効果もあります。 しかし、煮沸には正しい方法があり、間違った方法では逆効果になることもあるのです。

10分以上沸騰させる理由

煮沸で塩素やトリハロメタンを除去するためには、10分以上沸騰させることが重要です。

なぜ10分以上なのでしょうか。 実は、短時間の沸騰はトリハロメタンを増加させるという研究結果があります。 トリハロメタンは、水温が上昇すると反応が活発になるため、沸騰開始直後から5分程度は、逆に濃度が高くなる傾向があるのです。

また、塩素は沸騰によって揮発しますが、完全に除去するには時間がかかります。 3〜5分の沸騰では、塩素の約50%程度しか除去できないというデータもあります。

そのため、煮沸で塩素とトリハロメタンを効果的に除去するためには、以下の手順を守ることが大切です。

  1. やかんのフタを開けた状態で沸騰させる
  2. 沸騰してから10〜15分以上加熱を続ける
  3. 水蒸気とともに塩素・トリハロメタンを蒸発させる

やかんのフタを閉めたままだと、揮発した物質が水に戻ってしまうため、必ずフタを開けて加熱してください。

出典: 東京都水道局「トリハロメタンの除去方法」 URL: https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/faq/qa-22.html

煮沸後の注意点

煮沸した水を使用する際には、いくつかの注意点があります。

まず、煮沸後の水は雑菌が繁殖しやすいということを覚えておきましょう。 塩素を除去した水には、殺菌効果がなくなっています。 そのため、常温で放置すると雑菌が繁殖しやすくなるのです。

煮沸後の水は、以下のように取り扱ってください。

  • 冷蔵庫で保存し、できれば当日中に飲み切る
  • 常温での長時間放置は避ける
  • 清潔な容器に移して保存する
  • 赤ちゃんのミルク作りに使用する場合は、その都度煮沸する

また、煮沸ではPFASやマイクロプラスチック、重金属類は除去できないことにも注意が必要です。 これらの物質が気になる場合は、後述する浄水器や浄水型ウォーターサーバーの使用を検討してください。

【正しい煮沸方法の手順を示したイラスト】

やかんのフタを開けて10分以上沸騰させ、冷蔵保存するまでの正しい煮沸消毒の3ステップ手順を示したイラスト

浄水器の選び方と効果

浄水器は、水道水に含まれる様々な物質を除去できる便利な機器です。 蛇口に取り付けるだけで、手軽に浄水を利用できるため、多くの家庭で使用されています。 しかし、浄水器にはさまざまな種類があり、除去できる物質も製品によって異なります。

浄水器で除去できる物質

浄水器で除去できる物質は、製品に搭載されているフィルターの種類によって決まります。

活性炭フィルター 活性炭は、多孔質の炭素材料で、表面積が非常に大きいのが特徴です。 この表面に有機物質が吸着されることで、塩素、トリハロメタン、カビ臭、農薬などを除去できます。 多くの浄水器に標準搭載されている基本的なフィルターです。

中空糸膜フィルター 中空糸膜は、細いストロー状の膜で、0.1マイクロメートル程度の微細な穴が無数に開いています。 この穴より大きい物質(細菌、濁り、赤サビなど)を物理的にブロックします。 活性炭と組み合わせて使用されることが多いです。

RO膜(逆浸透膜)フィルター RO膜は、水分子だけを通す非常に目の細かい膜です。 塩素や有機物はもちろん、重金属類、PFAS、ミネラル成分まで、ほぼすべての物質を除去できます。 ただし、ミネラルも除去されるため、水の味が変わることがあります。 また、ろ過に時間がかかり、廃棄水が発生するというデメリットもあります。

イオン交換樹脂 イオン交換の仕組みを利用して、鉛やカドミウムなどの重金属類を除去します。 活性炭や中空糸膜と組み合わせて使用されることが多いです。

出典: 一般社団法人浄水器協会「浄水器の種類と特徴」 URL: https://www.jwpa.or.jp/

浄水器のタイプ別特徴

浄水器は、設置方法によっていくつかのタイプに分けられます。 それぞれのメリット・デメリットを理解して、ご自身のライフスタイルに合った製品を選びましょう。

蛇口直結型 蛇口に直接取り付けるタイプで、最も手軽に導入できます。 価格も数千円から1万円程度と比較的安価で、取り付けも簡単です。 ただし、フィルターの容量が小さいため、交換頻度が高くなります。 除去できる物質の種類も、据え置き型と比べると限られる傾向があります。

据え置き型 キッチンの流し台に設置するタイプです。 フィルターの容量が大きく、除去できる物質の種類も多いのが特徴です。 ただし、設置スペースが必要で、価格も数万円程度と高めです。

ポット型(ピッチャー型) 容器に水を入れてろ過するタイプです。 数千円程度と安価で、冷蔵庫に入れて冷やしながら浄水できるのがメリットです。 ただし、ろ過に時間がかかり、大量の水を使用する場合には不向きです。

ビルトイン型 シンク下に設置するタイプで、蛇口周りがすっきりするのがメリットです。 高性能なフィルターを搭載できますが、設置工事が必要で、価格も10万円以上と高額になることが多いです。

フィルター交換の重要性

浄水器を使用するうえで、フィルター交換を怠らないことが非常に重要です。

フィルターは使用するにつれて、除去した物質がどんどん蓄積していきます。 交換時期を過ぎても使い続けると、除去能力が低下するだけでなく、蓄積した物質が水に溶け出したり、フィルター内で雑菌が繁殖したりするおそれがあります。

つまり、フィルター交換を怠ると、かえって水質が悪化する可能性があるのです。

各製品の取扱説明書に記載されている交換時期を必ず守り、定期的にフィルターを交換してください。 また、使用量が多い場合は、推奨交換時期よりも早めに交換することをおすすめします。

【浄水器のタイプ別比較表(特徴・価格・除去物質など)】

蛇口直結型、据え置き型、ポット型、ビルトイン型の4種類の浄水器の価格、性能、メリット・デメリットを比較した一覧表

浄水型ウォーターサーバーという選択肢

近年、注目を集めているのが浄水型ウォーターサーバーです。 従来のボトル型ウォーターサーバーとは異なり、水道水を浄水して使用するタイプのサーバーで、環境にやさしく経済的な選択肢として人気が高まっています。

浄水器との違い

浄水型ウォーターサーバーは、一見すると浄水器と似ていますが、いくつかの重要な違いがあります。

温度調節機能 浄水型ウォーターサーバーの最大の特徴は、冷水・温水がいつでも使えることです。 多くの製品は、冷水(5〜10℃)、温水(80〜90℃)、常温水など、複数の温度帯を備えています。 一部の製品では、6段階の温度調節が可能で、用途に応じて最適な温度の水を使い分けることができます。 浄水器では、温度調節機能を持つ製品はほとんどありません。

衛生管理機能 浄水型ウォーターサーバーには、UV-LED殺菌自動クリーニング機能を搭載した製品があります。 これらの機能により、タンク内の雑菌繁殖を抑制し、常に衛生的な状態を保つことができます。 一般的な浄水器には、このような衛生管理機能はありません。

フィルター性能 浄水型ウォーターサーバーは、浄水器と比べて高性能なフィルターを搭載していることが多いです。 一般的な浄水器は、家庭用品品質表示法で定められた12種類の物質の除去が基準となっていますが、浄水型ウォーターサーバーの中には、23種類以上の有害物質を除去できる製品もあります。 さらに、最新の製品では、50種類(有害物質40種類+細菌8種類+ウイルス2種類)の除去を実現したものも登場しています。

定期メンテナンス 浄水型ウォーターサーバーのレンタルプランでは、カートリッジが定期的に届くサービスが付いていることが多いです。 これにより、フィルター交換を忘れるリスクが軽減されます。

PFAS除去性能の比較

2026年4月から水質基準項目となる**PFAS(PFOS・PFOA)**の除去について、浄水器や浄水型ウォーターサーバーの性能は製品によって大きく異なります。

一般的な活性炭フィルターでは、PFASの除去率は50〜70%程度にとどまることが多いです。 RO膜(逆浸透膜)を使用した製品では、90%以上の除去率を達成できますが、ミネラルまで除去されてしまうデメリットがあります。

一部の浄水型ウォーターサーバーでは、特殊な活性炭と中空糸膜を組み合わせた高性能フィルターを採用し、PFOS・PFOAの除去率80%以上を第三者機関での試験で確認しています。 このような製品では、ミネラルを残しながらPFASを効果的に除去することができるため、おいしさと安全性を両立できます。

PFASの除去性能は、製品によって大きく異なるため、購入やレンタルを検討する際は、第三者機関での試験結果を確認することをおすすめします。

【浄水器と浄水型ウォーターサーバーの機能比較表】

浄水器と浄水型ウォーターサーバーの機能(温度調節、衛生管理、除去物質数など)とコストを比較し、サーバーの利点を強調した比較表

ペットボトル水との比較

水道水の安全性が気になるかたの中には、ペットボトル水を購入しているかたも多いでしょう。 ここでは、水道水とペットボトル水を比較してみましょう。

水質基準の違い 意外に感じるかもしれませんが、水道水のほうがペットボトル水よりも厳しい水質基準をクリアしています。 水道水の水質基準項目は51項目であるのに対し、ミネラルウォーターの水質基準項目は18項目にとどまります。 つまり、水質基準の観点からは、水道水のほうが安全性が担保されているといえるのです。

コストの違い コストの面では、水道水が圧倒的に経済的です。 水道水の料金は、1リットルあたり約0.16円(1m³あたり約160円)程度です。 一方、ペットボトル水は、1リットルあたり約160円程度が相場です。 つまり、ペットボトル水は水道水の約1,000倍のコストがかかるのです。

環境への影響 環境面では、水道水のほうがはるかにエコです。 ペットボトル水は、製造・輸送・廃棄のすべての過程で二酸化炭素を排出します。 また、プラスチックごみの問題も深刻です。 最近の研究では、ペットボトル水にはマイクロプラスチックが含まれていることも報告されています。

利便性 利便性の面では、それぞれ一長一短があります。 ペットボトル水は持ち運びができ、災害時の備蓄にも適しています。 一方、水道水(浄水含む)は、自宅でいつでも利用でき、買い物の手間がかかりません。

これらを総合的に考えると、日常的な飲料水としては、浄水器や浄水型ウォーターサーバーで浄水した水道水を使用し、外出時や災害備蓄用にペットボトル水を活用するのがバランスの取れた選択といえるでしょう。

出典: 厚生労働省「水道水質基準について」 URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/kijun/

【水道水・浄水・ペットボトル水のコスト比較グラフ】

水道水、浄水型サーバー、ペットボトルの1リットルあたりのコストを比較し、ペットボトルとの約1000倍の差を示した棒グラフ

特に注意が必要な人とケース

水道水は、健康な大人が日常的に飲む分には安全ですが、赤ちゃん、妊婦、高齢者、ペットなど、特に注意が必要な人やケースがあります。 ここでは、それぞれの注意点について解説します。

赤ちゃんのミルク作りと水道水

赤ちゃんに与えるミルクを作る際の水については、多くのお母さん、お父さんが気を遣っているのではないでしょうか。 結論から言うと、日本の水道水は赤ちゃんのミルク作りに使用しても問題ありません

ただし、いくつかの注意点があります。

煮沸について ミルク作りに使用する水は、一度沸騰させてから使用することが推奨されています。 これは、万が一の病原性微生物の存在を考慮したものです。 ただし、前述のとおり、煮沸は10分以上行い、トリハロメタンも除去することが望ましいでしょう。

ミネラルウォーターの注意点 意外かもしれませんが、ミネラルウォーターはミルク作りに適さない場合があります。 硬水のミネラルウォーターには、マグネシウムやカルシウムなどのミネラルが多く含まれており、赤ちゃんの未発達な腎臓に負担をかける可能性があるのです。 ミネラルウォーターを使用する場合は、必ず軟水(硬度60mg/L以下)を選んでください。 日本の水道水は平均硬度約50mg/Lの軟水なので、この点では安心です。

浄水の活用 塩素や微量の有害物質が気になる場合は、浄水器や浄水型ウォーターサーバーで浄水した水を使用するのも良い選択です。 特に、浄水型ウォーターサーバーであれば、適温のお湯がすぐに出るため、ミルク作りの時短にもなります。 ただし、浄水は殺菌効果がないため、調乳後は早めに使い切るようにしてください。

PFAS(有機フッ素化合物)について 近年、PFASの健康影響として、胎児・乳児の発育への影響が指摘されています。 お住まいの地域でPFASが検出されている場合は、PFAS除去性能の高い浄水器や浄水型ウォーターサーバーの使用を検討してもよいでしょう。

出典: 厚生労働省「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン」 URL: https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/qa/070604-1.html

【赤ちゃんのミルク作りに適した水の条件をまとめた図】

赤ちゃんのミルク作りに適した水の条件(軟水、煮沸済み、PFAS除去、適温)をOKとNGの例で示したインフォグラフィック

妊婦が気をつけるべきこと

妊娠中は、自分の体だけでなく、お腹の赤ちゃんの健康も考えなければなりません。 水道水に関しても、いくつか気をつけるべきことがあります。

鉛の影響 鉛は、胎児の発育に悪影響を及ぼす可能性がある物質です。 特に、妊娠初期の胎児の神経系の発達に影響を与える可能性が指摘されています。 築年数の古い住宅にお住まいで、鉛製給水管が使用されている可能性がある場合は、朝一番の水を飲用以外に使う、または浄水器を使用するなどの対策をおすすめします。

PFASの影響 PFASは、胎盤を通過して胎児に移行することが研究で明らかになっています。 また、一部の研究では、妊娠中のPFAS曝露と低出生体重児との関連が示唆されています。 お住まいの地域でPFASが検出されている場合は、PFAS除去性能の高い浄水器や浄水型ウォーターサーバーの使用を検討してください。

水分補給の重要性 妊娠中は、血液量が増加し、羊水を維持するためにも、十分な水分摂取が必要です。 厚生労働省は、妊婦の1日あたりの水分摂取量として、約2リットルを推奨しています。 水道水の安全性が気になって水分摂取が減ってしまうのは本末転倒です。 安心して飲める対策を講じたうえで、こまめな水分補給を心がけてください。

カフェインの制限 水道水とは直接関係ありませんが、妊娠中はカフェインの摂取にも注意が必要です。 コーヒーや紅茶の代わりに、浄水や白湯を飲む習慣をつけるのも良いでしょう。

出典: 厚生労働省「妊娠中と産後の食事について」 URL: https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/

高齢者の水分補給

高齢者にとって、適切な水分補給は健康維持のために非常に重要です。 しかし、加齢に伴い喉の渇きを感じにくくなるため、脱水症状に陥りやすいという特徴があります。

脱水のリスク 高齢者の脱水は、夏場の熱中症だけでなく、冬場にも起こりやすいことに注意が必要です。 脱水になると、血液の粘度が上がり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。 また、認知機能の低下便秘の原因にもなります。

水分摂取の工夫 高齢者が水分を摂取しやすくするためには、いくつかの工夫が有効です。

  • こまめに少量ずつ飲む習慣をつける
  • 時間を決めて水分を摂る(起床時、食事時、入浴前後など)
  • 飲みやすい温度の水を用意する
  • 手の届く場所に水を置いておく

浄水型ウォーターサーバーは、冷水・温水・常温水がすぐに出るため、高齢者の水分補給に適しています。 特に、常温水や白湯を好む高齢者には、温度調節機能が重宝されるでしょう。

塩素への配慮 高齢者の中には、水道水のカルキ臭が気になって飲めないというかたもいます。 無理に水道水を飲ませようとするよりも、浄水器や浄水型ウォーターサーバーを導入して、飲みやすい水を用意するほうが、結果的に水分摂取量の増加につながります。

出典: 厚生労働省「高齢者のための食生活指針」 URL: https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/seikatu/kourei/

【高齢者の脱水予防のポイントをまとめたイラスト】

高齢者のための1日の水分補給タイミング(起床時、食事時、入浴前後、就寝前)と目標量、脱水リスクをまとめたイラスト

ペットに与える場合の注意点

犬や猫などのペットに与える水についても、気をつけるべきことがあります。

水道水は基本的に安全 結論から言うと、日本の水道水はペットに与えても安全です。 水道法で定められた基準をクリアした水道水であれば、犬や猫に与えても健康上の問題はありません。

ミネラルウォーターの注意点 意外かもしれませんが、ミネラルウォーターはペットに適さない場合があります。 特に、硬水のミネラルウォーターに含まれるマグネシウムやカルシウムは、犬や猫の尿路結石の原因になる可能性があるのです。 ペットには、ミネラル分の少ない軟水または水道水を与えることをおすすめします。

塩素の影響 水道水に含まれる塩素は、ペットにとっても問題のない濃度です。 ただし、金魚やメダカなどの魚類は、塩素に非常に敏感です。 水槽の水には、必ずカルキ抜きをした水を使用してください。 汲み置きして塩素を飛ばすか、市販のカルキ抜き剤を使用します。

清潔な水の提供 ペットの健康のためには、常に清潔な水を提供することが大切です。 水入れの水は毎日交換し、水入れ自体も定期的に洗浄してください。 塩素を除去した浄水は、雑菌が繁殖しやすいため、こまめな交換がより重要になります。

PFASの影響 PFASのペットへの影響については、まだ研究が進んでいる段階です。 しかし、一部の研究では、ペットの血液中からもPFASが検出されたという報告があります。 ご自身が飲む水と同様に、ペットの水についてもPFAS対策を講じておくと安心でしょう。

【ペットに与える水の注意点をまとめた図】

犬や猫などのペットに与えて良い水(水道水、軟水)と避けるべき水(硬水、塩素水)をまとめたOK/NGガイドのイラスト

よくある質問

水道水の安全性について、多くのかたが疑問に思うことをQ&A形式でまとめました。

水道水とミネラルウォーターはどちらが安全?

水質基準の厳しさという観点では、水道水のほうが安全といえます。

日本の水道水は、水道法によって51項目の水質基準をクリアすることが義務付けられています。 一方、ミネラルウォーターの水質基準項目は18項目にとどまります。 つまり、検査項目の数でいえば、水道水のほうが約3倍も多くの基準をクリアしているのです。

また、水道水は24時間365日の監視体制のもとで管理されていますが、ミネラルウォーターはボトリング時の検査が主です。

ただし、ミネラルウォーターにもメリットはあります。 塩素が含まれていないため、カルキ臭がないこと、持ち運びができること、災害時の備蓄に適していることなどです。

どちらが「安全」かは一概には言えませんが、水質基準の厳しさでは水道水が優れており、コストパフォーマンスでも水道水(浄水含む)に軍配が上がります。

海外の水道水は飲めない?

海外の水道水については、国や地域によって状況が大きく異なります。

水道水が飲める国 世界で水道水をそのまま飲める国は、日本を含めて約12カ国程度とされています。 フィンランド、スウェーデン、ドイツ、オーストリア、アイルランド、アイスランド、スロベニア、アラブ首長国連邦、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどが該当します。

水道水を飲まないほうがいい国 上記以外の国では、基本的に水道水をそのまま飲むことは避けたほうがいいでしょう。 特に、アジア、アフリカ、中南米の多くの国では、水道水の飲用は推奨されていません。

海外旅行時の注意点 海外旅行時は、以下の点に注意してください。

  • ペットボトル水を購入する(封印を確認)
  • にも注意(水道水で作られている可能性)
  • 生野菜や果物の洗浄水にも注意
  • 歯磨きもペットボトル水で行う

水道インフラが整っていない国では、ウォーターサーバー浄水器を設置しているホテルも増えています。

出典: 国土交通省「令和5年版 日本の水資源の現況について」 URL: https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000098.html

災害時の水道水利用

災害時には、水道が断水したり、水質が悪化したりする可能性があります。 日頃から備えをしておくことが重要です。

断水への備え 大規模災害では、長期間の断水が発生する可能性があります。 東日本大震災では、約257万戸が断水し、最大で7ヶ月間も断水が続いた地域がありました。

断水に備えて、以下を準備しておきましょう。

  • 1人1日3リットル×3日分の飲料水を備蓄
  • できれば1週間分を目標に
  • ペットボトル水備蓄用保存水を活用
  • ポリタンク(給水所からの運搬用)

災害時の水道水の安全性 災害復旧後に水道が再開した場合、最初のうちは濁り異臭がすることがあります。 水道局からの「安全宣言」が出るまでは、飲用を避けるか、十分に煮沸してから使用してください。

備蓄した水道水の保存期間 清潔な容器に入れた水道水は、直射日光を避けて常温で3日間冷蔵庫で10日間程度は保存可能です。 塩素の殺菌効果が持続している間は、雑菌の繁殖が抑えられるためです。

出典: 東京都水道局「災害への備え」 URL: https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/soudan/saigai.html

【災害時の水の備蓄目安をまとめた図】

災害時に必要な3日分の飲料水備蓄目安量(1人9L、4人家族36L)をペットボトルとポリタンクのイラストで示したガイド

水道水の保存期間は?

水道水の保存期間は、保存方法塩素の残存状況によって異なります。

常温保存の場合 清潔な容器に入れた水道水は、直射日光を避けて常温で保存した場合、約3日間は飲用可能です。 ただし、夏場の高温下では、より短い期間で品質が低下する可能性があります。

冷蔵保存の場合 冷蔵庫(10℃以下)で保存した場合、約10日間は飲用可能とされています。 低温では塩素の揮発が抑えられ、雑菌の繁殖も遅くなるためです。

浄水の場合 浄水器や浄水型ウォーターサーバーで塩素を除去した水は、保存に適しません。 塩素の殺菌効果がなくなっているため、雑菌が繁殖しやすい状態です。 浄水は、その日のうちに飲み切るようにしてください。

煮沸した水の場合 煮沸した水も、塩素が除去されているため、長期保存には適しません。 煮沸後は冷蔵庫で保存し、当日中に飲み切ることをおすすめします。

災害備蓄用の保存水 長期保存を目的とする場合は、市販の備蓄用保存水を購入することをおすすめします。 これらは特殊な処理がされており、5〜15年の長期保存が可能な製品もあります。

まとめ

この記事では、水道水の安全性について、科学的根拠にもとづいて詳しく解説してきました。 最後に、重要なポイントをまとめます。

日本の水道水は世界トップレベルの安全性 日本の水道水は、51項目もの厳しい水質基準をクリアし、24時間365日の監視体制のもとで管理されています。 世界で水道水をそのまま飲める国は約12カ国しかなく、日本はその中でも特に高い品質を誇っています。 基本的に、日本の水道水はそのまま飲んでも安全です。

気になる物質への理解 水道水には、塩素、トリハロメタン、PFASなど、気になる物質が微量に含まれています。 しかし、これらはすべて基準値以下に管理されており、生涯にわたり摂取しても健康に影響が生じない水準に設定されています。 特に、2026年4月からはPFASが水質基準項目に格上げされ、より厳格な管理が行われるようになります。

地域や住宅による違いに注意 水道水の安全性は、お住まいの地域住宅の種類によって多少の違いがあります。 古い住宅では鉛製給水管からの溶出リスクがあり、マンションでは貯水タンクの管理状態が水質に影響します。 また、PFASの検出状況も地域によって大きな差があります。 気になるかたは、水道局に問い合わせるか、NHKの「PFAS検出状況マップ」で確認してみてください。

より安心して飲むための対策 水道水をより安心して飲みたいかたには、煮沸、浄水器、浄水型ウォーターサーバーという3つの選択肢があります。 煮沸は手軽ですが、10分以上加熱する必要があり、PFASは除去できません。 浄水器は、製品によって除去できる物質の種類が異なるため、フィルターの性能をよく確認することが大切です。 浄水型ウォーターサーバーは、高性能なフィルターと温度調節機能を兼ね備えた、便利な選択肢です。

特に注意が必要な人への配慮 赤ちゃん、妊婦、高齢者、ペットには、水道水の安全性について、より慎重な配慮が必要です。 特に、PFASや鉛の影響を受けやすい乳幼児や妊婦は、PFAS除去性能の高い浄水器や浄水型ウォーターサーバーの使用を検討してもよいでしょう。

日常の安心は、正しい知識から 水道水の安全性について、過度に心配する必要はありません。 しかし、正しい知識を持ち、必要に応じて適切な対策を講じることで、より安心して水道水を飲むことができます。

この記事が、あなたとご家族の健康的な暮らしの一助となれば幸いです。

【記事の要点をまとめたインフォグラフィック】

日本の水道水の安全性に関する5つの重要ポイント(基準、PFAS規制、対策方法など)をまとめた縦長のインフォグラフィック